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この度、2025年4月にイギリスはバーミンガムで開催された、IAF(The International Association of Facilitators)主催の国際カンファレンスにて、私、ナレッジサイン代表の吉岡英幸が、他の2人の日本人ファシリテーターと組んで、ワークショップのファシリテーションを実施しましたので、その内容をレポートします。
IAF(The International Association of Facilitators)は、全世界で数千人のファシリテーターが会員になっているファシリテーターの国際的な団体で、アジア、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカなどの地域で毎年ショウケース的なカンファレンスを開催しています。
今回私が参加したのは、England & Wales支部が開催する、ヨーロッパ向けのカンファレンスで、私とキャリアコンサルタントの射水和香子さん、Nüworks代表のStefan Nüsperling(ステファン ニュースペリング)さんの3人で、”The Art of Co-Facilitation”というタイトルの1時間のセッションをファシリテーションしました。
コ・ファシリテーション(Co-Facilitation)というのは、2人以上のファシリテーターが協働してファシリテーションすることを指し、実際の現場でもよく行われますし、特にカンファレンスのワークショップでは、ほとんどのセッションが、コ・ファシリテーションのスタイルで行われています。
コ・ファシリテーションのメリットは、ファシリテーターにも参加者にもありますが、今回のワークショップは、コ・ファシリテーションするファシリテーターと、参加者のメリットをともに最大化するにはどうしたら良いか?ということを考えるワークショップになっています。
今回のワークショップの内容設計においては、まずは、ファシリテーターの方々が、コ・ファシリテーションにどのように向き合っているのかをリサーチすることから始めました。
そこで、国内外のさまざまなファシリテーターに協力いただき、以下のような設問のサーベイを実施しました。
1.ファシリテーションの経験年数
2.どれぐらいの頻度でコ・ファシリテーションを行っているか?
3.どのような時にコ・ファシリテーションが必要と思うか?
4.どのようなコ・ファシリテーションのスタイルが好みか?
5.コ・ファシリテーターを選ぶ基準は何か?
6.あなたの最高なコ・ファシリテーション経験は?
7.あなたの最悪なコ・ファシリテーション経験は?
8.ファシリテーターにとってコ・ファシリテーションの価値は何だと思うか?
9.参加者にとってコ・ファシリテーションの価値は何だと思うか?
10.ファシリテーター、参加者双方にとっての価値を最大するために、セッションの前にファシリテーターが行うべきことは何か?
11.ファシリテーター、参加者双方にとっての価値を最大するために、セッションの最中にファシリテーターが行うべきことは何か?
12.ファシリテーター、参加者双方にとっての価値を最大するために、セッションの後でファシリテーターが行うべきことは何か?
このサーベイの詳しい結果は、以下のURLにて公開していますので、ぜひご覧ください。
https://miro.com/app/board/uXjVJ_jzqeU=/?moveToWidget=3458764656817846172&cot=10
もちろん、コ・ファシリテーションについての正解は一つではなく、さまざまな考え方があります。
たとえば、コ・ファシリテーターを選ぶ基準についても、以下のように考え方はさまざまです。

これらの結果をふまえ、ワークショップでめざしたことは、
・このように事前に学習した内容を素早く参加者に共有する
・そのうえで、コ・ファシリテーションについての新しいアイデアやアプローチを参加者から引き出すものとする
・楽しみながら参加でき、なおかつコ・ファシリテーションの見本を見られるようにする
上記をふまえ、私たちが採用したのが、事前に実施したサーベイの結果を会場の壁一面に張り巡らすということと、Theatrical Facilitationというアプローチです。これは、ファシリテーターが役柄を演じてお芝居形式で進行していくというものです。

今回のワークショップでは、私たち3人が実際にコ・ファシリテーションのテーマでワークショップを進行しようとしますが、3人のチームプレイがうまくいかず、なんと参加者の前でファシリテーター同士がケンカをしてしまう、というハプニングを演出します。
その後、このセッションに至る前の段階で何が起きていたのかをお芝居で再現することで、参加者は、この3人のコ・ファシリテーションのセッション前と、セッション中を目撃することになります。そうして、3人がコ・ファシリテーションを成功させるために、どうすべきだったのか?を考えてもらう、という趣向です。
事前にお芝居風で進めることを告知しながらも、ハラハラドキドキ、そして思わぬ展開に爆笑の連続になるという、ファシリテーションのセッションとしては極めて珍しい雰囲気での進行となりました。
詳しくは、以下の動画で進行の一部始終を紹介していますので、ご覧ください。
実は、Theatrical Facilitationというアプローチは、私自身が、海外のカンファレンスなどでよく行っているとてもユニークなものですが、以下のようにたくさんのメリットがあるのです。
メリット 1.英語のネイティブスピーカーではない日本人がお芝居のセリフを覚えることでスムーズにトークできる
英語のネイティブスピーカーではない日本人が、海外のセッションでプレゼンテーションする場合、どうしても言葉の前に、”Well…..,”とか、”So…..,”, “Ah…,”といった、Fillerと言われるもの、日本語での「ええ・・・、」、「あのう・・・、」にあたる余分な言葉が多くなってしまい、スマートに感じません。一方でしゃべることを丸暗記して臨もうとすると、何か硬い感じになってしまいます。
お芝居のセリフで、「ええ・・・、」、「あのう・・・、」が出てこないように、セリフとして覚え、役柄としてセリフを話すことで、硬い感じがせずに堂々と話せるのです。セリフをちゃんと覚えないといけないのは、丸暗記と同じですが、役柄に入れば自然なトーンで話せるようになりますし、かけ合いのあるお芝居なので、相手のセリフでこちらのセリフを思い出すこともできます。
同じ丸暗記をするのなら、お芝居のセリフとして丸暗記した方が、言葉に表情が出てきます。
メリット2.キャラクター設定やセリフの掛け合いによって、コ・ファシリテーターが均等に役割を担える
コ・ファシリテーションのスタイルにもさまざまあります。役割配分をどうするのか?どのようにコ・ファシリテーター同士が絡むのか? 全体の傾向としては、一つのセッションをいくつかのトピックに分けて、それぞれのファシリテーターが交互にトピックのリードをしていく、というものが多いようです。その場合、トピックの数をちょうど半分ずつ担当することで、均等な役割責任を負うスタイルを多く目にします。
ファシリテーターが均等に役割を担うという点ではそれも一つの方法ですが、私は、全体を通して、ファシリテーター同士が会話の掛け合いをしながら進行していくのが好きです。その方が、インタラクティブな印象を与えますし、コ・ファシリテーター同士による化学反応も起きやすいと思います。
メリット3.キャラクター設定にワークショップのテーマを投影させ、ストーリーで語ることによって伝えたいメッセージに説得力を持たせる
お芝居形式ですとまさに会話の掛け合いで進行することができます。また、役割の重さもキャラクターの設定次第です。ベテランのファシリテーターと若手のファシリテーターが組んだ場合、時間的に同じ時間を担当していても、全体の進行の中で重要なメッセージングはベテランのファシリテーターの方が担いがちです。
ファシリテーションのセッションでは、たいてい、自分たちの得意とするメソッドや、信じている考え方などを紹介するレクチャー部分がありますが、私がこれまで見てきた中では、経験のあるファシリテーターの方が、そういうレクチャー部分を担うケースが多くありました。
私は、お芝居の利点を生かして、重要なメッセージングをレクチャーではなく、ストーリーで語るようにして、しかも、意外なキャラクターがストーリーテラーの役割を果たす、という演出方法が好きです。
その方が、ストーリーへの感情移入が増し、メッセージへの説得力も高まります。たとえば、コ・ファシリテーションにおけるShould doとShouldn’t doについてレクチャーで示すよりも、Good cop, Bad cop型という対照的なキャラクターの織り成すストーリーによって、その対比が明確になり、説得力になるのです。
メリット4.何より参加者を楽しませて、場全体が盛り上がる
最後になんと言っても楽しいこと。お芝居を演じるのは、おもにレクチャー的な部分になりますが、参加者が笑ったり反応したりすることで、場は盛り上がり、それ自体がインタラクションになります。
今回のお芝居演出では、コ・ファシリテーションの悪い見本だけでなく、実は良い見本もさまざま示し、参加者にそれを挙げてもらい、良いコ・ファシリテーションのために必要なことをアウトプットとして出していただきました。
以下のように、私たちのコ・ファシリテーションのセッションの前と最中を見て、良いと思った点、良くないと思った点を挙げていただき、参加者とファシリテーター双方にとってより良いコ・ファシリテーションのために、セッションの前と最中、そして、セッションの後に何をすべきか?を考えてもらいました。
その結果が以下のものです。

さらにワークショップの最後では、Chat GPTに参加者のアウトプットをサマライズしたファシリテーショングラフィクを作ってもらいました。
シンプルな構成なので、必ずしもアウトプットの正確なサマリーとは言えないのですが、フリップチャートの写真をアップロードしサマリーをして1枚のファシリテーショングラフィックにまとめるというプロンプトを与えることで、グラフィックレコーダーが描くようなものに近いグラフィックが仕上がるのです。

昨今では、ファシリテーションにいかにAIの技術を活用するか?というトピックに世界のファシリテーターも関心が高いのですが、これも一つのAI活用だと思いますし、さらにこのような活用方法は質が高くなっていくでしょう。
今回のワークショップは内容の設計からリハーサル、本番までまさにファシリテーター同士の協働によって生まれたものです。複数のファシリテーターと組むことによって、一人では実現し得ないTheatrical Facilitationのようなスタイルも可能ですし、いろんな視点での価値を提供することができます。
まさに、私たち自身が、The Art of Co-Facilitationを存分に味わったと言えます。 
(文責:株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸)






















