JICA(国際協力機構) 様でグローバルなグループのファシリテーションを提供しました(英語でのファシリテーション事例)

This post is also written in the following language: English (英語)

2024年9月、JICA(国際協力機構)様は、日本人と外国人の次世代リーダーが、気候変動やエネルギー問題、先進国と新興国/途上国の協力などについて議論する国際的な研修事業、「松本塾」を開催し、ナレッジサインがファシリテーションを担当しました。

この研修事業は、JICAの社会基盤部が、画期的な技術によるエネルギー・トランジションに向けた新興国/途上国支援のあり方や、国際頭脳循環への取り組みのあり方を模索する中、京都大学総長(第25代)、国立研究開発法人理化学研究所理事長、その他政府委員等を歴任され、現在は、公益財団法人国際高等研究所所長である松本紘氏の発案で、科学技術や社会制度のブレークスルーを担う人材を育成する研修事業として企画されました。

8ヵ国、18名の若い次世代リーダーが国際的な社会問題を議論する

「多くの日本の若い研究者は自分のテーマを掘り下げるだけで、それで世界をどのように変えるのか、大局観と思想がなく、根本的な議論をしていない。理系と文系の研究者間で交流が少ない。有望な院生を集め、同世代の外国人の研究者とのフリーディスカッションの場を設けてはどうか。」
という、松本氏の問題意識のもと、日本の大学に属する文系・理系の大学院生8名と、インドネシア、エルサルバドル、ケニア、バングラデシュ、ブータン、ベトナム、マレーシアから日本に派遣されている長期研修員10名の合計18名が、京都府にある国際高等研究所に集い、5日間のプログラムに取り組みました。

本プログラムは、近年国際的に盛んとなっている気候市民会議と同様に、気候変動問題、エネルギー問題、環境対策の最新技術などの専門知識について、各界の専門家の講演をインプットを受けて、参加者がそれらのテーマについてディベートやプレゼンテーションをするアウトプットへと昇華するスタイルが取られています。

全5日間のうち、前半の3日間は、大学の教授陣、民間企業の専門家、業界団体の専門家など、さまざまな分野の識者10名が、気候変動や気候変動対策/環境対策の実態、新エネルギー開発の最前線、その他さまざまな最新イノベーションについて、具体的なデータをもとに講演を行いました。
また、講演に並行して、参加者をグループに分けて、2つの異なる立場で意見を戦わせるディベートも実際され、知識のインプットと、意見表明のアウトプットの両方が行われました。

そして後半の2日間は、アウトプットにフォーカスします。これまでインプットされた知識を背景に、気候変動などの世界的な社会問題をどう解決していくか、各グループでディスカッションし、政策提言的なスケールでのアクションプランを考え、プレゼンテーションするというものです。
このプラン策定には、およそ丸一日をかけ、5日目の最後に各グループが自身のプランをプレゼンテーションします。

ナレッジサインは、この後半2日間のディスカッションと、プレゼンテーションセッションをファシリテーションしました。

議論のプロセスとアウトプットの質を高めるための仕掛け

まずは、価値観、知識、立場、環境の違いの多様性を共有するために、出身国や専門領域などが異なる多様なメンバーでのグループアサインが行われ、ディスカッションの質を高めるために、アクションプランに対して、以下のように具体的に5つの要求事項を課しました。

・キーとなるステークホルダー、特に、先進国、新興国/途上国の間の対立を乗り越える方策が考えられていること
・参加メンバーひとり一人の専門知識や観点が融合された集合知になっていること
・新しい技術の導入など、議論の分かれるものに対して、社会的コンセンサスをどのように得るか考えられていること
・具体的なステップと全体のロードマップが描かれていること
・コストの規模がある程度想定され、誰がどのようにコスト負担をするのかが考えられていること

このような研修事業でディスカッションしていくことは、きちんとした建設的な議論の仕方を学ぶ良い機会でもあるため、合計5時間にもおよぶプラン策定のディスカッションを5つのフェーズに分け、ファシリテーションにおける発散と収束の概念を意識して、徐々に議論を成熟させていくためのプロセスをサジェスチョンしました。

グループ作業へのひとり一人のコミットメントを高める仕掛け

また、このようなグローバルなグループ構成では、声が大きい方や、英語力の抜きんでた参加者が議論を占有してしまうことがあるため、参加者一人一人が確実に議論に貢献できるように、5つに分けた各フェーズで、各参加者が必ず1回はファシリテーター役を務めるルールを設定しました。
この場合のファシリテーターの役割を、以下のようにシンプルにすることで、ファシリテーションの専門的な知識がなくとも、ファシリテーター役を全うできるようにしました。

・一人一人の均等な参加を促す
・タイムマネジメントをする
・各フェーズで取り組むべきアジェンダからはずれないように注意喚起する

さらに、プレゼンテーションも誰か一人が担うのではなく、参加者全員が何らかの役割を均等に担う、というルールにしました。

本研修事業の本来の目的は、アクションプランを作ることそのものよりも、将来的にこのような社会問題への対策の企画や実行を担うような次世代リーダーを育成することなので、アクションプランを作る過程が、自分たちの成長に結びつくように、後半2日間を通した、自分自身の成長目標というものも各参加者に考えていただきました。

また、リーダーシップという観点では、他者の成長にコミットメントすることも重要なので、各自の成長目標に、互いにどのような支援ができるのかも、ひとり一人考えていただきました。

    

イベントを通してグローバルリーダーシップを養成する

このようなCross-Culturalな環境での集合研修では、研修の過程を通じて、チームビルディングし、リーダーシップを養うことが重要です。特に気候変動などの世界的な社会問題の解決には、異なる立場の人たちが、利害や価値観の違いを乗り越えて協力していくことが重要です。
そういう意味では、各グループの構成は、性別、年齢、経歴、専門領域、先進国と新興国/途上国など、属性が混在しており、まさに世界の縮図のようになっています。このような環境のもと、多様性から来る利点と困難な点を享受しながら、共通のアウトプットづくりに真剣に取り組むことは、絶好のグローバルリーダーシップ育成となります。

   

今回のファシリテーションでは、全体のプロセスを通して、どのような成長のストーリーが描かれるのかを具体的にイメージし、最適なプロセスを設計するとともに、各場面でどのような関わりをすれば、自主的で創造的な成長が期待できるか、わずかな空気の変化をも意識しながらファシリテーションすることに腐心しました。

JICA様では、今回の参加者同士の継続なコミュニケーションの場を提供し、長期的なリーダー育成にコミットすると同時に、同様なイベントを今後も定期的に開催していく予定です。

ワークショップを担当したバイリンガル・ファシリテーター

吉岡英幸 (Hideyuki Yoshioka) 株式会社ナレッジサイン 代表取締役

プロのファシリテーターとして、1,000件以上の議論の場をファシリテーションした経験を持つ。組織改革やマネジメント改革のファシリテーションや、企業の中期計画策定、IT戦略、人事制度設計のコンサルティング、ファシリテーションを数多く手がける。ファシリテーションや各種コミュニケーションの研修も開催し、ファシリテーションを活用したグローバル人材育成プログラムの開発にも積極的に関わる。
英語でのファシリテーション、グローバル人材育成に積極的に関わり、自ら海外とのさまざまなネットワークを開拓。日本の大手企業や外国企業が、国内外で開催するグローバルミーティングのファシリテーションを数多く手がけている。

■国際的なファシリテーター資格
IAF CPF(Certified™ Professional Facilitator)

Language: Japanese, English
Available: Japan, Singapore, Hong Kong, India,other areas in Asia, North America, Eu
言語:日本語、英語
対応可能地域:日本、香港、シンガポール、インド、他アジア、北米、欧州各地

CASES/INSIGHTS/EVENTS